ピクニックとsiri

折角の晴れたゴールデンウィーク、ピクニックに来た。

春と秋、週末の朝にはパートナーとよくピクニックに行く。
場所はいつも決まっていて、家から自転車で行けるすぐ近所の総合公園だ。
スポーツ広場や芝生や遊具、バーベキュー広場があり、
週末にはスポーツ少年や家族連れなどで賑わっている。
小さな川もあり、ちびっ子達がよく走り回っている。

昨今のアウトドアブームもあり、大きなカートを引いてやってきてテントやタープを広げる人も多いが、我が家は持ち物が少ない。
レジャーシート、飲み物、食べ物、ティッシュ、スピーカー、スマホなど貴重品ぐらいだ。
食べ物は洋で、サラダを作ったりお肉を焼いてタッパーに詰める。
時々スーパーのお惣菜を買うこともあるが、だいたいは家で準備する。
食事に合わせて飲み物はワインだ。
さすがに瓶をそのまま持って行くのは気が引けるので、水筒に入れ替える。
(お花見シーズンだと、和で日本酒の時もある。)

公園に到着して早速、いつもの場所に向かう。
通路から少し離れた木が生い茂る川の近く、なだらかな傾斜になっている場所が我が家の定位置だ。
早速レジャーシートを敷き準備を始める。
といってもリュックから持ってきたものを出すだけなのだが。
10時ぐらいの遅めの朝ご飯、爽やかな日差しの中で乾杯する。
お金のかからないながらも贅沢な休日の朝ご飯である。

ピクニックの醍醐味は人間観察。

複数家族の子供の面倒を見るくたびれたお父さん、の周りを水遊びするちびっ子達
テントを立てるのを諦める若いカップル
犬を連れた中年夫婦
散歩をする老夫婦
――バーベキューのスモーキーな匂いも漂ってきた。
木陰で涼みお酒を飲みながら、様々な人間模様が繰り広げられているのを眺めるのは楽しい。

そんな穏やかな空気を吹き飛ばす、インパクトの強い人が登場した。
自転車を押して歩くTシャツにズボンの、一見普通の40代女性・・・だが尻が半分出ている。
ズボンがずり落ちているのだ。
しかもパンツを履いていない・・・?
確かにかつて平成の時代「半ケツ」が流行り、ズボンをギリギリ下までずらして履く文化もあったが、しかしその頃でも皆パンツは履いていただろう。
自転車のカゴに荷物があるため、この人もピクニックだろうか。
場所を探しているのか我が家の横を通り過ぎて行った。

と思ったら10分後に同じところにやって来た。
5分に1回ズボンを引っ張り上げて直しているが、すぐにずり落ちる。
サイズが合わないにも程がある。
木のそばに自転車を停めて、何やら紐を木にくくりつけている。
どう考えてもそのズボンのベルト通しにその紐を通した方が良さそうだ。
紐を木にくくりつけている間にもズボンはずり落ちる、そして引き上げる。

固唾を飲んで見守る。一体何を始めるんだ。
ハンモックが出てきた。
なるほど、この良い天気の中、ハンモックに揺られようということか。
うーん、ますます分からない。そんなに尻が出ている理由が。
一生懸命ハンモックをセットしている。
しかしなかなかセットが終わらない。
その間もずっとズボンはずり下がり引き上げるを繰り返している。
尻を見ながら食事をするなんて滅多にない経験だ。
こちらはお酒も呑んでいる(しかもけっこう呑んだ)ので、笑いのハードルも下がっている。
あまりジロジロ見るのも失礼だし・・・と目をそらしたりもするのだが、気になって仕方がない。
もう正午だがご飯は食べないのだろうか?

やっとこさハンモックがセット出来た。
座り心地を確かめているが・・・位置が低い。
ほぼ地面である。
座ったり寝そべってみたり、立ち上がってタープを広げてみたり・・・その間もズボンはずり落ちては引き上げられる。
全然落ち着かない。
いつになったら落ち着くのか。
なんだか探偵になって張り込みをしている気分だ。
近くを通り過ぎる趣味がカメラであろうお爺さんも、その尻女を二度見する。
そりゃそうだ、治安の良くない地域ならまだしも。
こんな比較的治安の良い地域の公園で尻が半分も出ているんだ、気になるのが普通だ。
私もすごく気になる。

目を離した数分の隙に、尻女がいない。自転車も無い。
と視線を少しずらせば、居た。
始めに諦めた場所に戻るらしい。
ハンモックをまたイチからセットしている。
そしてまたズボンはずり落ちている・・・。

尻女は一応出来上がったらしいハンモックに寝そべりタープをかぶっている。
やっと落ち着いたか? 安心して我が家もお酒を呑み進められる。
と一息ついた3分後ぐらいに、尻女はまたゴソゴソしている。
な、なぜーーー!?
タープではなく網を紐にかぶせている。
虫除けの網か。
初夏だし虫も活動的になってきたし、虫除けは大事だよな、うん。
虫除けの網をかぶりまたハンモックに寝そべる。
やっぱりほぼ地面ぐらい低い位置だけど。

しばらく動きそうになかったので、ここで我が家は引き上げて帰ることにした。
楽しんでいるのかいないのかよく分からない雰囲気で、非常に興味深い人物であった。
また次に遭遇できるか楽しみである。

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