一度獣を飼うと、毛をモフモフしたい欲がどうしても湧き上がる。
散歩する犬たちを見るとわしゃわしゃしたくなる・・・ムツゴロウさんが頭に浮かぶ。
しかし余所の子に馴れ馴れしいのも失礼である。
ずっと猫を飼いたいと言っていたものの、自分には無理かななんて思っていた。
というのも実家の犬はほぼ親に任せきりだったし、一人暮らしをしてからは自分のことで精一杯だった。
しかし猫にまみれる友人の実家にお邪魔したり、猫好きなパートナーと暮らしたり、X(旧Twitter)で愛される猫たちを見るうちに随分と影響され、猫も良いもんだなあと思った。
人によっては簡単に「飼えば?」と言うが、ひとつの命。
食材みたいにそう簡単に飼えるものではない。
というわけで、YouTubeでサンシャイン池崎さんの保護猫活動を見たり、散歩がてら近所の地域猫巡りをしてモフモフしたい欲をやりすごしていた。
そんなある日、スーパーまでパートナーと二人歩いていると、遭遇した。
海辺の学校裏の草むら、大人しいキジトラが居た。
子猫ではない、大人の体つきである。
1月後半の寒さが厳しい中、草むらの陰にひっそりと丸まっている。
他の野良猫にご飯をあげながら様子を見ていたのだが、動く気配が全くない。
他の猫がお腹を空かせているということは、キジトラもお腹が空いている筈・・・
喧嘩に弱い子なのだろうか、人間に対して臆病なのだろうか。
とりあえず近寄ってみると、逃げない。ご飯はモリモリ食べる。
そして腹を見せて転がる。
撫でて欲しいらしい。無防備過ぎる。
だいたい逃げたり人前でご飯を食べない他の猫とは違い、初対面から人懐っこくて、運命というやつを感じた。
お腹を見せて甘える野良がいるか?
飼いたいと言っていたものの「宝くじ当たらねえかな~(鼻ほじ)」ぐらいに考えていたので、実際にこういう猫と遭遇するなんて思いもよらない。
パートナーが私に聞く。
「どうする?」
「飼いたい気持ちは強い・・・! けど飼ったことがないし今すぐの決断は勇気が出ない。」
「明日また様子を見に来ようか。それで決めよう。」
(それで決めよう、と言いつつ心は決まっていた。)
ということで翌日、同じ場所に様子を見に行く。
居るか・・・居ないか・・・・・・居た!!
とりあえずご飯をあげ、撫でる。いや、もう決定だ。この子はうちの子だ。
それからは早かった。ホームセンターでキャリーやトイレ、ご飯などを買う。
1日に3回もホームセンターに行くとは思わなんだ。(車が無く徒歩と自転車により)
ご飯を食べ落ち着いたところでキャリーに入れる。
野良の筈だが抱っこが容易である。どこかで飼われていたのだろうか、可愛いもんな、分かる。
とはいえやはり野良、いきなりの狭いキャリーに驚き鳴く。そしてうんちを漏らす。
怖いよな・・・人間でもいきなり拉致されれば当然怖い。人間でも漏らすシチュエーションだ。
保護と言いながら人間のエゴである。
そのまま家に帰宅。
帰宅直後に雨が降り出す。ますます運命を感じる。
(こじつけであろうという突っ込みを自分でもしながら)
初めての場所なのでキャリーからなかなか出てこない、かと思っていたが3時間程経った頃に家の中をうろうろ探検・・・・・・
そしてソファに落ち着く。展開が早い。
・・・あれ? うちの家、初めてだよな???
サンシャイン池崎さんの保護猫たち、数日は籠もって出てこないなんでザラだったよな???
くぅ~~~、更に運命を感じるではないか。(こじつけ)
耳の先がカットされた、近所の人に愛されているであろう地域猫だ。
野良猫が増えないように虚勢手術し、その証拠として耳をカットされ、地域に戻される。
事後報告になってしまったが、近くの動物愛護協会に連絡し無事を伝えた。
ちょうどご飯担当の方が気になっていたようで、無事を聞き安心されたようだ。
地域猫は確認された順に番号が割り振られ、担当の方がご飯をあげたり体調を見ているらしい。
病気持ちなのかなど検査やワクチン接種が必要であるため、今度は動物病院に電話をかける。
「賀上と申します。猫を道で保護しまして、一度お連れしたいのですが・・・」
「分かりました。猫ちゃんのお名前は?」
「ソラです。」
「賀上ソラちゃんですね。」
自分の名字で猫の名前を呼ばれると『そうか、私は親になるのか。』と急に責任感がズンとのしかかってきた。
もちろん世話はちゃんとするつもりだし分かっていた筈が、自分が親の立場になるという感覚が抜け落ちていたらしい。気が引き締まる。
外より家の中の方がずっと良い環境だとは思うが、話すことの出来ない猫にとって本当はどうなんだろうか、本当に良いことなんだろうか。そう考えることもある。
親として出来る限りのことをして、幸せに過ごして欲しい。
仕事も改めて頑張ろう、そう決意したのだった。